『笑顔の中に美味さあり。』

やきとん専門店「やき処やんちゃ」店主ブログ

人情
毎度ありがとうございます!

同級生でもあり、日本酒の仕入れでもお世話になってる「佐野屋」店主サノのブログのおかげで
急に訪問者数が増えた当ブログですが、いつもの感じでネタがあれば書く!無ければ書かない
お気楽なスタイルでお届けしております。。。

で、今日もまた書くわけでして・・・。

これは社会人1年生、東京で証券会社に勤めていた時の話しです。

当時、新人社員のノルマは、リスクの少ない「外国ドル国債」を毎月100万円以上売るか、
他の証券会社に預けている株券を毎月500万円分以上切り替えてくるか、でした。

ローラー作戦でしらみつぶしにチャイムを押しても誰も相手にしてくれず、都会の厳しさを痛感していた
そんな時、たまたま三軒茶屋の「マツモトさん」という方のお宅にお伺いしました。
木造平屋の長屋のようなお宅の玄関まで、招き入れてくれた奥様は65歳ご主人は70歳でした。

突然の飛び込み訪問にも、「ウチはごらんのようにボロい家で、あなたに預けるお金も株もないんですよ。
しかも主人が病気で伏せておりまして・・・」と、玄関先で申し訳なさそうにお盆を抱えながら
一杯の熱いお茶を出して下さったんです。
部屋の奥からはご主人のゼコゼコと苦しそうに咳き込む声と、シューシューと機械音が聞こえてました。

「ウチにもあなたみたいな孫がいるんですよ。どうぞ頑張って下さいね」なんて言われて
東京に来て、初めて他人に優しくしてもらった気がしました。
泣きそうになるのをこらえながら、その一杯のお茶をそそくさと頂き

「ありがとうございます・・・頑張ります」と言った声は潤んでいたと思う。

eyes0773.jpg東京であれほど深くお辞儀をしたのは、後にも先にもあれが最後だった。

名刺を受け取ってくれた事、お茶を出してくれた事、話を聞いてくれた事、
そんな当たり前のような事が、あのときは本当にうれしかった。

その後、支店長から「ノルマ達成できねぇヤツは、親でも兄弟でも何でもいいから、
金預かって来い!」という毎日の説教に我慢できずに会社を辞めるんですけど、
その半年後・・・。

その頃、北海道にいた自分に同期入社のヤマヤから電話があって、
「三軒茶屋のマツモトさんて方から、お前あてに電話があってよ。ご主人が亡くなって
 遺産の中から株券出てきたから、お前に管理お願いしたかったんだってよ。」
「もう辞めたって言ったか?」
「うん。そう言ったらすごく残念がってた。」
「そっかぁ、たった1回しか行ってないのに、よく憶えておいてくれたなー。何でオレなんだろ?」
「なんか気になってお前の名刺、とって置いてくれたんだってよ、好青年だって。」
「ふーん・・・。で、いくら分?」
「それがよ、6000万。」
「ろ、ロ・ク・セ・ン・マ・ン!」
「うん。オレ担当になってよ。今オレ、ダントツで同期の営業トップだぜ。助かったわ。じゃあな」
「・・・ツーツー。」

すべて実話です。
金額にもビックリしたんですけど、たった1回しか行ってない自分を心配してくれて
改めて電話をくれたマツモトの奥さんの優しさには2度救われました。

ご挨拶もせず東京を後にしました。申し訳ありません・・・。
そして・・・ありがとうございました。

あれから、20年・・・。
まだご健在でしょうか。。。
あなたからの優しさは、これからも忘れないでしょう。

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