『笑顔の中に美味さあり。』

やきとん専門店「やき処やんちゃ」店主ブログ

あの日の授業
毎度ありがとうございます!

今日は8月8日、田中先生の命日です。
気がつけば3年という時間も、本当にあっという間ですよね。

いつもブログに書く田中先生との思い出は、大体が野球以外のことばかりです(笑

というより、現役時代は個人的に何かを話すなんて場面もありませんでしたし、
バッティング練習にしても「します!」「大振りするな!バカタレが。」「したっ!」で終わり。
会話なんて、あるはずもありません。

普段は社会を教えていた田中先生ですが、これがまた教科書を読んで黒板に書くだけの
まったく面白くもなんともない、恐ろしく眠くなるだけの授業なんですよね(笑

が、クラスの中に野球部が自分ひとりだけだったせいか、事あるごとに「イシカワ、答えろ。」と
突然当てられるんで、人一倍眠くなる授業なのに絶対に寝れないという地獄の時間だったわけです。

卒業も近くなったある日の社会の時間、「今日は教科書は開かんでいい。」なんて
田中先生にしては珍しい展開で授業が始まりました。

「寝たいやつは寝ていい。うるさくはするな。いいか、わかったな。」
他の生徒達が「ラッキー!」なんて言ってても、自分は安心できません。
何かしら裏があるんだろうと、正直警戒していたんですね。

教室の窓辺に寄りかかり、時折、遠くに見える月山を眺めながら、静かに先生が話し始めたんです。

「オレは、子供の頃、スキーのジャンプの選手になりたかったんだ。」

「うそ~、マジで?」
「絶対に、飛べないでしょ。」
「先生、スキーなんて、できんの?」

などと調子こく女子を、「こいつら、あとで先生にぶっ飛ばされんぞ。」などと心の中で思いつつ
いつもとは違うテイストの授業に、自分ももう寝るどころではなくなっていたんですよね。

秋田県大館市出身の先生は、子供の頃に夏は野球、冬はスキーをやっていて、
どちらもそれなりにセンスがあって本気で取り組んでいたそうなんです。
結果的に、野球で大学に進学し、教員になったわけですから「その生き方に悔いはない。」
と言い切る言葉には、なんの迷いもないように聞こえました。

「でも、人の生き方なんてひとつじゃないんだ。お前達には可能性がある。
 ひとつ失敗しても、また次に頑張ればいい。最後に自分が幸せだと思えるかどうかなんだ。」

三年間、野球部と社会の授業でお世話になった田中先生の言葉のなかで、
なぜかしらあの日の授業の話しが今でも鮮明に頭から離れないんですよね。
もしかしたら、高校時代の三年間で一番心に残っている言葉かもしれません。

いや、先生の言葉と言うより、あの窓から遠くを眺めながら、違う生き方をしていたかもしれない
自分の面影を想像していた先生の表情が、忘れられなかったのかもしれません。

なぜ、あの日、あんな話しを始めたのか、大人になってもずっと気になっていたんですよね。

ひょっとしたら、先生は学校を辞める気なんじゃないかな、なんて思っていた時期もあります。
学校を退職されたあと、二人でゴルフの練習中にふと直接聞いたことがあるんです。

「なにも、ない。授業が進みすぎたから、ただの時間調整。」と笑っていましたけど、
「誰にも話したことなかったのに、そんな話ししたか?」
「・・・は、はい。(泣」

でもいいんです。
あの日の、あの言葉と、先生のあの表情を忘れずに、自分も頑張ってきましたから。

「最後に、自分が幸せだと思えるかどうかなんだ。どの道に進んでも頑張るように。いいな。」

先生・・・。
人生の答えを出すにはまだちょっと早いけど、ちゃんと頑張っていますよ。
いろんな仕事をして、落ち着きなく生きてきましたけど、
ようやく自分の道を見つけて、今が幸せだと感じながら生きています。
 
まだまだ、みんなと一緒にゴルフ行きたかったですね。

やっぱりそっちに逝くの、早過ぎましたよ、先生。

また、先生との思い出話しを書かせてもらいますね。

 

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