『笑顔の中に美味さあり。』

やきとん専門店「やき処やんちゃ」店主ブログ

父の匂い
毎度ありがとうございます!

怒涛の一週間が終わりました。
髪の毛もシャツもホルモンと煙の匂いが染み付いて、燻されちゃってます(´c_` )

帰宅したときに、カミさんがまだ起きていれば「すぐにお風呂入って!」と
半ば強引に風呂に促されます。
「仕事してきたんだから、燻されてるのは当然だろうが!」
などと、キレるなんてことはないんですけど・・・、思い出したことがあるんで、今日は昔の話でも。

自分の家は、祖父の代から【家畜商】を営んでました。
自宅前の牛小屋には数頭の牛がいて、自分も子供の頃から牛の世話をさせられたもんです。
なかでも牛の糞や尿といった排泄物の匂いは強烈で、牛の世話をした後は髪の毛から衣服まで、
それはそれはものすごい匂いが移るんですよ。

たまに手伝う自分でもそうなんですから、親父にはもう完全に染み付いちゃってる感じです。
当然、自宅の中もそれとなくそんな匂いが常に漂っている感じが、ものすごくイヤだったんですよね。
小学生の頃、自宅に遊びに来た友達にも「お前んちって、クサイな。」なんて言われたこともあります。

ある時、いつものように牛の世話をして戻ってきた親父に、
「この家、臭くてやんだ!父ちゃんも臭くてやんだ(イヤだ)!」と言ってしまったんです。
言ってしまった自分自身が「しまった!」と思いましたけど、親父は怒りませんでした。

kachikushijo1.jpg静かに一言だけ、
「んだが。いーが、オラいは牛ちょしてナンボだあんだ。」
(そうか。いいか、ウチは牛の世話をして食ってんだ)

財布を持たず、腹巻にお札を入れていつも長靴を履いていた親父に、
静かに、そしてはっきりと男の仕事というものを、教えられた瞬間でした。

スーツを着て満員電車に揺られていようが、牛の糞まみれになっていようが、
家族を養うため一生懸命に働く親父の仕事に、綺麗も汚いもないんだと。

大学を卒業して証券会社に勤めたり、船に乗って漁師をしたり、
自分自身もいろんなことをして今まで生きてきました。
船に乗っていた頃は、自分も車もすべてが生臭かったですもんね。
そんな環境下でも、悲壮感や絶望感なんかは全然感じませんでしたし、
むしろサラリーマン時代よりも楽しく働いていた気がします。

そして今は、もっと楽しく仕事をさせてもらってます。
髪の毛や洋服が、煙で燻されてくさいほど、「今日も一日頑張ったなぁ。」と思える瞬間でもあるわけです。

親父の匂い。。。
最近は「オレもお父さんと一緒に、やんちゃで働きたい。」なんて言い出した息子も
そこに気が付いてくれるでしょうかねぇ・・・( ̄≠ ̄)

おっと、そんな余韻に浸ってる暇はなかったんだっけ。
これから、風呂に入ります(笑

みなさま、素敵な休日をお過ごし下さい。

コメント

1. 無題

親父の言葉って、その時は軽く流してたのに
ふと、今思い出すと重い言葉だったりしますね。
あっ今日、コンビニの前ですれ違ったのに挨拶も
出来ませんで申しわけございませんでした。
保育園のお遊戯会を見て、ダッシュで店に
戻ってたのでかなり焦ってました~ウッス

2. >ヒデさん

ひさしぶりに、ダッシュでチャリンコを漕ぐ大人に遭遇しましたよw( ̄Д ̄;)wワオッ!!

親父の言葉=重い言葉

…うーん、まだまだですねえww
自分なんて、まだ息子と遊んでもらいたいモンで軽い!軽い!

いつか、真剣に相談される時まで、羊を被っておきますか( ̄ー ̄)ニヤリッ

3. オヤジの一撃

その昔、会社で超理不尽な事がありまして
「こんなクソ会社辞めてやるーっ!」という勢いのまま、家に電話をかけ
洗いざらいぶちまけた事がありました
「会社辞めて家に帰りたい」と泣き事言った私に対し、父が
「毎月貰っている給料は、嫌な思いしてる“ヤンダ賃"だと思えば腹も立だねろ
そんね辞めでば、わーひとりで食っていがいる見通し立ででがら辞めろ
おらいさはおめの食う分の飯はねえ」
と一掃されました

甘ったれちゃんはグウの音も出ませんでした
あれから10何年…未だに“ヤンダ賃"を頂いて食っております ワラ

きっと父も、長い会社勤めの中で
腹に据えかねる嫌な思いを沢山してきたんでしょうね
でも、私たち家族を食わせていかなければならない責任もありますから
そんな時はグッと我慢の連続だったのかも知れません
そう思いを巡らすと、オヤジの一撃ってほんとに重みがあります

4. >酒田むすめさん

>毎月貰っている給料は、嫌な思いしてる“ヤンダ賃"だと思え…

なんとも言えない味のある、深いお言葉ですね。
“授業料”と言わず“やんだ賃”と言ったところに、
厳しい言葉の中にある深い愛情を感じます。

最近、こういう親御さんって少なくなってる気がします。
子供の言い分を、何でもすぐに受け入れちゃう。

「可愛い子には旅させろ。」
やっぱり昔の人はいいこと言います。
きっと、酒田むすめさんのお父さんも“旅”させたんですね。

素敵なお話、ありがとうございました。

5. 無題

久々に泣けました;;

自分も30年近く昔、ウチの仕事でイヤな思いをしたコトがあります。
今でも夢に出てくるコトがある位の思い出です。

でも今思えば、その“イヤな思い”の原因をつくったのは自分自身の未熟さだったのだと…思います。

親の背中を見て子は育つ、とか申します。
自分にとっての親父は間違いなく、誇れるヒトだったと、胸張って言えます。
なんかクダラネーこと言うヤツがいたら、ブッとばしてやります^^b

酒田むすめのお父さんの“ヤンダ賃"の話は大好きです。
“親”とは…こうやって、子を育ててきてくれたんだなーと、つくづく思います。

よいお話をどうもありがとうございましたm_ _m

6. >サクラ嬢さん

親とは、誰よりも厳しい反面、誰よりも味方なんだと思うんですよ。

特に親父は普段が寡黙なだけに、たまに話す言葉には迫力と重さもあったもんです。

子供にどんな背中をみせるのか。

親の適当な言い訳を、子供は見抜きます。
強さを語るだけじゃなく、子供に感じさせることも大切ですよね。

なんて、自分も偉そうなこと言えるような親父にはなってませんけど…。

でも、自分にとっての親父の手本は「徳蔵」だけです。
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